例えば炎・田上の「それでも、はじめない」
田上(例えば炎)
第2話 私の人生不合格作戦
ぼくの不合格体験記
僕はありとあらゆる全ての受験に落ちている。
受験生にはかなり縁起の悪い人間だと自負している。
今日はそんな僕の不合格体験記を書こうと思う。
初めて受験に落ちたのは小学校6年生、12歳の中学受験だ。
小学校4年生の時、クラスの中でちょっとだけ勉強ができた僕は親に連れられ、私立中学のオープンスクールというものに行った。
そこでは自分より年がちょっと上のお兄さんたちがすごく大人に見え、キラキラした学校生活を送っていた。
公立では考えられないくらい大きい体育館、ピッカピカのトイレ、自分が普段食べている給食の何倍も美味しそうな料理が出てくる食堂。
何もかもが魅力的でここに絶対通いたいと強く思った。
帰りに学校名が印字されたシャーペンを親に買ってもらった。
帰りの車内では、「あそこに行きたいならもっと勉強頑張らなね」という親からの話は上の空で、シャーペンに印字された学校名をニヤニヤしながら見つめ、未来の学校生活に胸を膨らませた。
そこからは放課後も休みの日もできる限り、志望校の学校名が印字されたシャーペンとともに受験勉強に励んだ。
いざ迎えた受験当日、学校まで車で送ってくれたお父さんにほんとは受かりたくて受かりたくてたまらない気持ちを全力で抑えて「ま、ダメ元でやってくるわ」と見栄を張って、会場に向かった。
試験を終え、手応えは全くなかった。
塾の理科の先生がここ5年は外していないと言っていた予想出題範囲も見事に外れていた。
もちろん不合格。
「ま、ダメ元でやってくるわ」とお父さんに見栄を張ったことも忘れ、その日はリビングでワンワン泣いた。
晩飯は味がしなかったし、久々に見たテレビのバラエティ番組も一つも面白くなかった。
一緒に受験を頑張った学校名が印字されたシャーペンを筆箱から取り出し、爪で学校名の部分を擦り、何も書かれていない普通のシャーペンにした。
掲示板に合格者が張り出され、自分の番号がないとわかった瞬間、足元からくるザワザワとした感じ、血の気が引く感触、応援してくれた家族に励まされる情けない思い、同級生に受験に落ちたと伝える恥ずかしい気持ち、もっと勉強しとけば良かったという後悔。
もうこんな思いは2度としないと12歳の冬に心から誓った。
高校受験も落ちた。
こんな思いを2度経験してしまった。
塾の先生から「この今から配る鉛筆は先生が神社から買ってきた縁起物です。
これ見てみ、普通の鉛筆と違って断面が五角形の鉛筆になってるんや。珍しいやろ。なんでこの鉛筆が五角形になってるか、誰かわかるやつおるか?わからへんか。
正解は合格と五角をかけとるんや。
しかもな、先生今までこの鉛筆を渡した生徒で落ちた生徒はいません」と言ってもらった鉛筆を持ってしても落ちてしまった。
しかも今回は受験に時計を忘れてしまったという落ち度もあった。
残り時間が何分かもわからない極限状態の中ただただ問題を解き続けた結果、手応えはまるでなかった。
その日の晩飯は美味しくなかったし、久々に見たテレビのバラエティ番組は面白くなかった。
掲示板に合格者が張り出され、自分の番号がないとわかった瞬間、足元からくるザワザワとした感じ、血の気が引く感触、応援してくれた家族に励まされる情けない思い、同級生に受験に落ちたと伝える恥ずかしい気持ち、もっと勉強しとけば良かったという後悔。もうこんな思いは3度としたくないと15歳の冬に心から誓った。
大学受験も落ちた。
時計も忘れた。
高校受験の時に時計を忘れたから絶対時計は忘れてはいけないということを忘れていた。
もちろん手応えもなかった。
インターネットの画面に合格者が写し出され、自分の番号がないとわかった瞬間、足元からザワザワとした感じは来なかった。
血の気も引かなかった。
家族からはあんまり励まされないという情けなさはあった。
同級生には「またやん」と言われた。
もう勉強しなくていいんだという開放感もあった。
気づけば、慣れてはいけない苦痛に慣れてしまっていた。
その日の晩飯はとても美味しかったし、久々見たテレビのバラエティ番組は腹を抱えるくらい面白かった。
その後、滑り止めには合格し、大学生には一応なれた。
以上が僕の不合格体験記です。
他にも英検や漢検にも落ちたし、自動車の仮免にも落ちたりしています。
ここまで読んでくれた人の中にも、受験に落ちて絶望してる人がいるかもしれません。
心の支えになるかは知りませんが、僕は受験には落ち続けたけど、今のところ、人生まあまあなんとかなってます。
受験で落ちたことなんて、いつかへっちゃらになる日が必ずきます。安心してください。
でもあれだけは違います、賞レースの不合格。
あれはまだまだ足元からザワザワしますし、血の気が引きます。慣れない!
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