田辺さん名言集 Time is Sweets~時はマカロン~

酒寄希望(ぼる塾)

第10話 「可愛くなくてもいいんだよ」

みなさんこんにちは。ぼる塾の酒寄です。

私の相方田辺さんの名言を通してみんなで気楽になろう!というこの連載。

今回の名言はこちら!

 

可愛くなくてもいいんだよ

 

過去の話になりますが、わたしと田辺さんが芸人になったばかりの頃は女芸人が「ブス」と言われるのが当たり前の世界でした。「ブス」と言うことが面白いとされていたのです。この全く面白くないイジリに田辺さんはまいっていました。

 

田辺さん「廊下を歩いていたらいきなり知らない男芸人にブスって言われた」

わたし「何それ?! その男は頭おかしい」

田辺さん「悔しい!! 自分だって変な顔のやつほど容姿イジリをしてくる!! でも、そこでわたしが『あんただって不細工でしょ!』って返したらそいつと同じレベルになっちゃう!!」

 

そこでわたしは考えました。

 

わたし「田辺さん。次言われたら、『はい出たー! 好きな子いじめるタイプー!』って言いなよ」

田辺さん「あ! それ良いね!!」

わたし「そのあと向こうが何言ってきても、もうそいつは【好きな子に意地悪したいお子さまという牢獄】から出られないから」

田辺さん「ありがとう!! いただくね!!」

 

こうして、『はい出たー! 好きな子いじめるタイプー!』を手に入れた田辺さんは数々の男芸人を倒しました。

ちなみにわたしの顔はエラがはっているので、エライジリされたときは、

 

わたし「歯をくいしばって生きてきたので」

 

と、返すとそれ以上のイジリを受けることはありませんでした。頭を使わない悪口に対して我々は知性(?)で勝負するコンビだったのです。

 

……ここまでわたしの名言みたいになっていますが、ここから田辺さんの名言になるので安心してください。話は現在になります。ある日、田辺さんが言いました。

 

田辺さん「今はさ、ブスって言葉を使っちゃいけない流れになって本当に良かったよね」

わたし「そうだね」

田辺さん「でもさ、新たな問題が発生していると思うの」

わたし「新たな問題?」

田辺さん「なんか今の世の中って全員可愛くなくちゃいけないみたいになってない?」

 

言われてみると、昔は今ほど頻繁に「可愛い」というワードを聞かなかったように思います。

 

田辺さん「世の中、極端すぎるのよ。ブスは使用禁止! だから全員可愛い!ってさ」

わたし「優しく見えて優しくない世界だね。普通を望む人もいるから」

田辺さん「可愛い乱用しすぎ。可愛いから魂が抜けている。可愛いって特別でさ、愛してると同じくらい大事な言葉なのに」

わたし「可愛いは相槌感覚になっているかもね」

田辺さん「でもさ!! 可愛いという言葉のハードルは下がっているのに、可愛くなくちゃいけないという強迫観念は上がっているのよ! なんか今の若い子を見ていると『可愛いわたし』に囚われてすぎてない?」

 

田辺さんは、この件に関して、【可愛いわたしの闇】と名付けて研究していたそうです。

 

田辺さん「わたしは自分のこと可愛いと思ってないの。これは自虐とかじゃなくてね」

わたし「うん」

田辺さん「でも、『今日のわたしなんか可愛い』とか、思うこともあるわけよ」

わたし「うん」

田辺さん「可愛くなくても可愛くなれると言うか……まず、可愛いと自分を切り離したほうが良いと思うのよ。接着剤みたいに常にくっつけないで良いよ。付けたり外したりで良いよ」

 

田辺さんは、「可愛くなくてもいいんだよ」と言いました。

 

田辺さん「アイドルの子がさ、『可愛いわたしが最強』って本当に自信を持って言っているのはさ、多分、見た目とかじゃなくて、自分自身を根っ子から愛してるよ。『わたしが最強』なんだよ」

わたし「それ格好良いね」

田辺さん「可愛いに踊らされずに武器にしている。自分を信じている」

わたし「でも、その領域にいくのって結構難しいよ」

田辺さん「だから自分を可愛い一本勝負に決めなくて良いのよ。大人になると可愛い以外にも頭が良いとかスイーツに詳しいとか大事なことが沢山あるって気づくよ。大丈夫、大丈夫」

わたし「スイーツに詳しいはめちゃくちゃ田辺さんだね」

田辺さん「まさかの芸能界のスイーツ女王になったからね」

 

この会話の後、わたしも自分に対して、「可愛くなくてもいいんだよ」と言ってみました。なんだか心が楽になりました。