田辺さん名言集 Time is Sweets~時はマカロン~

酒寄希望(ぼる塾)

第4話 「悔しいから腹立つ過去はコントに利用してやりましょう!」

みなさんこんにちは。ぼる塾の酒寄です。

私の相方田辺さんの名言を通してみんなで気楽になろう! というこの連載。

今回の名言はこちら!

 

悔しいから腹立つ過去はコントに利用してやりましょう!

 

芸人をやっていて良かったなと思うのは、災難にあってもネタにできることです。

 

以前も少し書きましたが、私は吉本の養成所に入る前に一度就職しています。しかし、そこが自分には合わず、退職。心のリハビリとして養成所に入ったのです。

 

どんなところだったかと言うと、研修では雪山に連れて行かれ、騎馬戦をさせられました。体重の軽い私は騎手をさせられて、雪山で投げ飛ばされ失神。目を覚ました私は上司に、「お前はお客様から声をかけられたときでも失神しているのか!」と叱責されました。この出来事は辛かったというよりも私の中で意味が分からなすぎてちょっと面白いエピソードです。

 

「使えない同僚は撃ち殺せ」という言葉をリピートさせられるなど、とにかく私には合いませんでした。

 

私は相方になったばかりの田辺さんに前職場でのエピソードを話しました。田辺さんは、「ムカつく!」、「そんなことする意味あるの?!」、「頭おかしい!」と、私が言って欲しい言葉を全て言ってくれました。

 

そしてある日、私は【エアお冷】のエピソードを田辺さんに披露しました。

 

エアお冷とは、私が作った単語なのでこの世で田辺さんと私しか使いません。「お冷の出し方が下手だから練習しろ」と言われた私が、コップを持っている体で壁に向かって延々と「お冷でございます」と長時間言わされ続ける苦行です。タイムカードを切った後で毎日。何故、練習なのに肝心のコップを使わないのかと言うと、「こぼしたら仕事が増える」という理由で使わせてもらえなかったからです。

 

それを聞いた田辺さんは、「ひどい! エアで練習してうまくなるわけがないじゃない!」と、激怒し、激怒してくれた後でこう言いました。

 

田辺さん「これをコントにしない?」

私「エアお冷を?」

田辺さん「悔しいもの! 使ってやりましょう! エアお冷ってなによ!」

 

こうして私たちは初めて出場したキングオブコントでコント【エアお冷】を披露しました。結果はややウケでしたが、田辺さんとのネタ作り、練習、そして本番とずっとワクワクして、「もう自分なんて消えてしまいたい」と思ったあの日の記憶が楽しかった思い出に塗り替えられました。

 

私「ありがとう田辺さん!私何かを乗り越えたよ!」

田辺さん「良かった!悔しいから腹立つ過去はコントに利用してやりましょう!

 

こうして、私と田辺さんは実に様々な悔しい過去をコントや漫才に取り入れました。

 

田辺さんが空港で「不自然に腕が太い」という理由で麻薬の運び屋と疑われて別室に連れて行かれ、「無実です! 腕が太いのは自前です!」と叫んだこともネタにしたし、私が無実の罪でおならの罪を着せられて、「おならの妖精」と言われたことも、田辺さんが、合コンで「座り方、魔王みたいだね」と、言われたこともネタにしました。お客さんが笑ってくれると、それは全てわたしと田辺さんの手柄になりました。

 

私は最初に「芸人は災難になってもネタにできるから良い」と書きましたが、別に芸人でなくても悔しいことがあったらネタにして良いのです。みなさんもムカつくことでコントを作ってしまいましょう。小説にしても良いし、漫画にしても良い。あなたの作品に利用してやりましょう。一度試してみるとわかりますが、作品作りはストレス発散にとても良いです。気づけば怒りを忘れて職人のように作品と向き合っています。もしかしたら、何かの賞を受賞するほどの作品に化けるかもしれません。そしてその手柄は全てあなたのものです!

 

田辺さん「今日もムカつくことがあったよ! アンチが変なコメントしてきた!」

私「それもコントにしよう!」

田辺さん「そうしよう! ネタ提供ありがとうだよ!」

 

私達は強いのです。