ピ蔵本〜僕と僕の本たちの物語

ピストジャム

第7話 『アレン様は大変!! ぉ怒りになられてます。』アレン

ヮタクシがアレン様大先生を初めて見たのは十年ほど前CA4LA?


本作に影響を受けすぎて、つい「クリマン語」で綴り始めてしまった。クリマン語とは本作の著者であるアレン様が紡ぐ個性的な文章のことで、クリマンとはアレン様のファンの呼称だ。


もしかしたら、これらの説明だけでは理解できない方もいらっしゃるかもしれないので、本作に記されている著者プロフィールを紹介する。

アレン 大物マダムタレント。生きる幻。

想像してほしい。取引先でいただいた名刺の肩書きが、もし「大社長」とか「超取締役」とか書かれていたら。僕なら絶対に笑ってしまう。「生きる幻」もしかり。言葉選びも魅惑的な響きもいい。


著者の芸名は敬称なしの「アレン」だが、クリマンたち(ひろし)がみなアレン様と「様づけ」で呼ぶので、一般にもアレン様で広く浸透しつつある。これはヨン様以来の現象ではないカフォーラ?


お気づきのとおり、僕はもうすっかりアレン様にやられてしまって、クリマン化が始まっている。だから、僕が完全なクリマンになる前に、まだ意識があるうちに普通の文章で本作の魅力を伝えたいと思う。

アレン様を初めて見たのは十年ほど前だろうか。整形男子としてテレビに出演されていて、そのときは黒髪で、いまとは風貌も違っていたのだが、「整形に一千万円以上使っている」「パトロンがいる」などの発言が強烈で深く印象に残っていた。


それから時を経て、昨年。マネージャーと仕事先に出向いた際、マネージャーのバッグから写真集のような本が顔をのぞかせていた。しかも二冊も。


誰の本なのか気になって尋ねると、それはアレン様の『全てアレン様が正しいでございます』(玄光社)という単行本だった。思わず「アレン様、知ってます」と声を上げると、マネージャーは「アレン様、めっちゃ面白いんですよ」と言って、アレン様やその書籍についていろいろと教えてくれた。


これは「全ア本」と呼ばれていて、もともとは「全身アルマーニ」の人を略して「全ア」と称していたけれど、いまはもう「全ア」と言えば「全てアレン様が正しいでございます」を意味するとか、全ア本はアレン様の意向でいま応援してくれているファンを大切にするために増刷は一度しかしないと聞いたから二冊買ったとか、アレン様の文章は独特で面白いとか。ファンがクリマンと呼ばれていることも、そのときまで知らなかった。


僕は食い入るように全ア本を読んだ。オールカラーという豪華さもあり、ふだん手にする書籍とは読み心地もまったく違って興奮した。


浮世離れしたアレン様の容姿や言葉。十年前に目にしたときと比べものにならない迫力にただただ圧倒された。いま思えば、僕のクリマン化はもうあのときから始まっていたのかもしれない。

そして先日、出版されたばかりの本作を読んだ。こちらも前作同様オールカラーでグラビアも充実しているのだが、内容はしっかりとしたエッセイだった。


ダ・ヴィンチWebでの連載に加筆修正したものと書き下ろしが加わった十四編。市井の人々の怒りや不満を著者が代わりにブチギレてお焚き上げするというテーマで綴られた本作は、毒舌や「ズバリ言うわよ」的な辛辣な言葉が並ぶと思いきや、予想とは裏腹に悩める人たちの気持ちに寄り添った心にしみる言葉と笑いであふれていた。


「アンタが何をしていようが世界は回る。だからやりたい放題おやんなさい?」という一編では、日本人は我慢や自責を美徳とする風潮があるけれど、それが積もり積もって心や体を壊すこともあるし、死を選んでしまう人もいると切実に訴える。怒りを伝えることで相手に気づきを与える場合もあるし、それで壊れるくらいの関係なら、それは自分を守るために取った行動なのだから自分を責める必要はないと諭す。あなたが好き放題言って、思う通りに生きても、世界は普通に回っている。だから、自分らしく堂々と生きればいいのだと力強く語る。


「大丈夫、トラウマはいくらでも武器に変えられる」の編では、自身のトラウマについて赤裸々に告白する。幼少期から容姿や振る舞いをからかわれ続け、トラウマに支配されていた青春時代。そこから抜け出すには時間がかかったけれど、自分の幸せが何なのかを知り、自分のことを好きになることでトラウマを克服する一歩を踏み出せると説く。それでも、すっごく落ち込んだり、負の感情にまみれてしまったりすることもあると思う。そんなときは「ヮタクシを見て笑ったらいいの!」と最後まで鼓舞してくれる。


自分を見て笑ってくれたらいいという言葉はなかなか言えるものではない。それを口にできるようになるまでの苦しみや葛藤は計り知れない。傷を負った人の言葉。だからこそ、胸を打つ。


アレン様は芸人であり、パンクスだった。


根底に流れる笑いと反骨精神。子供のころからTHE BLUE HEARTSをこよなく聴いてきて、芸人になった僕が、本当のことを言う面白さと強さを体現する著者に引きつけられたのは自然なことだったのかもしれない。


本作は通常作家が試行錯誤し悩み尽くす、文体の獲得に成功している点も伝えておきたい。記述は全編クリマン語なのだが、加減が絶妙なバランスで調整されていて読みやすくなっている。作中には「アレン様用語辞典」なるページもあり、クリマン語の遊びも堪能できるつくりになっていて、最初は慣れない言葉遣いに戸惑う部分も多少あったが、読み進めていくとそれらの言葉が不思議と体に入っていく感覚を味わえ、文芸作品としても饒舌体の進化系を読んでいるようで非常に新鮮で楽しめた。


本当のことを言うのが難しいように、思ったことをそのまま書くことも正直問題難しい。それを唯一無二のクリマン語を用いて自由自在に表現するアレン様大先生はマッコト(野々村)尋常ではない。クリマン語で書かれた笑える小説があったら読んでみたいと思うのはヮタクシだけCA4LA? NPでも読みたい人はいるんじゃないかと思うンだ㌔どうカフォーラ?


ところ(ジョージ)でヮタクシ気がついたら、いつのまにか完クリになってたっぽいキャロルもうここまでとさせていただきます(太一アナ)。



『アレン様は大変!! ぉ怒りになられてます。』

著/アレン

発行/KADOKAWA


※次回の更新は、3月5日(水)の予定です。