眼鏡をはずすとちょっと目が大きくなる

浦井のりひろ(男性ブランコ)

第10話 キミの夢の中で逢いたい

 遡る事4年前。同期のkento fukayaから連絡があった。自分のYouTubeの企画で同期を集めてアイドルグループ的なのを作りたいので出てくれないか?とのことだった。kentoとは大阪NSCの頃から仲が良く、僕が上京してからも単独の幕間Vに呼んでくれたり、大阪に前乗りする際家に泊めてくれたりした。一度彼がアルバイトで一晩中居ない時に泊めてもらった際、鍵を開けたままにしておいてくれと言われた事をすっかり忘れて鍵を閉めてしまい、夜勤終わりでくたくたのkentoを締め出したままスヤスヤ眠ったりした事もあったが、愛想を尽かされることなく現在に至る。骨折-1グランプリ、さえない似顔絵など、さまざまな企画を劇場やSNSで発信し、どれもが面白く、見るのも出るのも楽しい。

 

 そんなkentoがアイドルをプロデュース?同期を集めて?kentoのネタのフレーズ「???(ハテナハテナハテナ)」が自然と頭に浮かぶ。あまりにも実態が掴めなかったが、断る理由もないのでオッケーした。いつものライブに呼んでもらった時の如く、本当に気軽い二つ返事だった。後日、大阪で他のメンバーと顔合わせのYouTube撮影だと言うので、吉本本社に向かった。部屋に入るとkentoの他にマユリカ中谷、紅しょうが稲田、ニッポンの社長ケツ、スーズ高見がいた。メンバーはすべて同期だと聞いていたものの、あまりにも同期だった。自分を含め全員のアイドル姿が想像できなかった。唯一あるとすれば、中谷が漫才の掴みでやるバク宙くらいのものだ。kentoは一体何を企んでいるのか。これからメンバー入りを掛けたオーディションを行うと唐突に発表された。自ら志願したならわかるが、呼ばれて行って落とされる可能性があるというのは何という理不尽か。我々はすでにプロデューサーの掌の上であった。

 

 この企画の主人公はスーズ高見であるという。なぜだ。もともとkentoの企画によく出ている高見が輝くアイドルになるまでの物語。歌唱テスト、ダンステストなど、メンバーに選ばれるための試練が続く。当時東京吉本に所属していたのは僕だけだったので、どうしても動画撮影のスケジュールが合わない時はリモートで参加した。結果電波状況によってはみんなの話が聞こえず微笑むだけで終わる日もあった。そんなアイドルグループがあっていいのか。合否の発表を兼ねたデビューライブに向けてレッスンや撮影が行われた。kentoが自ら調達した衣装に身を包み、プロの方にヘアメイクをしてもらう。元芸人の後輩カメラマンに撮ってもらった写真を見たとき、「これが、私……?」と少女漫画の主人公のような感想が浮かんだ。何年もほとんど変わっていないヘアスタイルが、プロの手によって晴れ晴れしく整えられていた。

 

 デビュー曲『似非デレラ』は、kentoの書いた詩に、プロの作曲家である馬瀬さんが曲をつけたもので、かっこいい本気アイドルソングであった。SNSで活躍する「らねっと」のAyumi先生(通称あゆせん)によるダンスの振り付けを必死に覚えた。ちゃんとダンスをするのは高校体育の選択授業で柔道がやりたくなくて選んだダンスの授業以来。あゆせんの見本を見て頭では理解したつもりでもその通りに体が動かない。なんとか覚えた振り付けでそのままMVの撮影に入る。人生で初めてのMV撮影は大阪NSCの屋上で小雨が降っていた。背景にエディオンなんば店のビルががっつり映り込む。残りはデビューライブの映像を使用するという。

 

 そして迎えたデビューライブの日。よしもと漫才劇場は普段と違う異様な熱気だった。たくさんのマンゲキメンバーに見守られながらデビューライブが始まった。ライブ時間は1時間以上あったが、持ち歌は『似非デレラ』1曲しかない為、ほとんどがコーナーという異色なアイドルライブだった。初めて人前で踊った時、ネタをしている時と全く違う歓声が飛んできて戸惑いと高揚が同時に襲ってきたのを覚えている。お客さんみんながこの大コント「アイドル」に全力で乗っかってくれている。ライブの終盤、メンバーの合否が発表され、高見だけ追加オーディションが決まった。なぜだ。これは高見の物語だからだ。それから高見とらぶおじさんがメンバー入りをかけて戦ったり、新曲の振り付けを覚えるため合宿に行ったりしながら、本当に少しずつ活動の幅を広げ、この度豊洲ピットでのライブを行うことになった。キャパは3000人。今では全員が活動の場を東京に移し、それぞれが頑張っている。思えば遠くまで来たものだ。だが現状、来た全員が寝転がれるほどスペースが空いているようだ。

 

この物語の主役である38歳(本当は41歳)高見。天性のパフォーマンス力をもつ中谷。一番真摯にアイドルに向き合う稲田。そんな稲田に怒られながら日々頑張るケツ。一番アイドルの素養があるプロデューサーkento。7月30日、どうかこの「誰でも会える、お金にならないアイドルグループ。」を見届けて欲しい。ライブは口パクで、信じられないくらいコーナーの時間が取られていて、立ち位置を堂々と間違えたりするけれど、必ず来て良かったと思ってもらえるはずだ。



※次回の更新は、2026年6月2日(火)の予定です。