自意識過剰デトックス

狩野大(バリカタ友情飯)

第6話 脳がダサい

いい歳して、いまだに洋楽が聴けない。

物理的な話でなく。

正確には嗜めないと言った方がいいだろう。

情けないことに0か100かの極端な思考なので、雰囲気だけの嗜み方がわからない。

 

というか邦楽すらも、歌詞が複雑だとこっちから脳みそを迎えにいかないとそのアーティストの伝えたいことに共感するのが難しい。

 

ロックの神THE BLUE HEARTS。名曲ばかりでもちろん好きではあるけど、いまだに甲本ヒロトの伝えたいことを本意気で理解して聴けているかと言えば、たぶん理解できてないと思う。

「ドブネズミみたいに美しくなりたい」を心から理解できているかと言われたら、「とにかく飾らない自分が最高ってことだよね。…え、まって、だよね?」と20年間聴いていても自分の理解力に震えるくらい自信が持てない。

だから他の人にも恥ずかしくて「すごい好きではあるんだけど…結局リンダリンダってどんな曲?」なんて今さら聞けない。

 

逆にアニソンは大好き。

 

情けないんだけど、理由はとにかくわかりやすいから。曲構成も幅広い層が楽しめるよう、Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、ラストに転調した大サビなんて構成も多くて、とても最の高。

歌詞の内容なんて細かく理解しなくても、直感でそのアニメを表現してるんだろうなと思えるのでわかりやすく聴いていられる。

 

アニメ・ポケモンの主題歌『めざせポケモンマスター』なんてタイトルで全部伝わるし、冒頭の「ポケモン!ゲットだぜ!」で「はい、もう言いたいこと全部わかりました。ありがとうございます!」ってなもんである。

最新版の『めざせポケモンマスター -with my friends-』に至っては曲の途中、サトシが我慢できずに「なってやるぜぇ‼︎」と、タイトルの意図を補完するダメ押しシャウトが収録されているので、彼のバイブスがより伝わる。だから異常に聴きやすい。

 

ところが、洋楽だけは本当に難しい。

理解するのにギリな邦楽に比べて、全部英語で歌われたら英語の翻訳と海外のニュアンスの二重の障壁が立ち塞がって余計難しくなってくる。

英語はいつまで経っても頭に入ってこないし、「雰囲気を楽しめばいいんだよ〜」とか言われてもいまだにその「雰囲気」の正解すらもわかっていない。

バンドの演奏力に酔いしれることが正解なのか、アーティストの思想を、知ってる断片的な英単語のみで頑張って感じ取りにいくのが正解なのか、どれの何を楽しめばいいのかわかっていない。

 

僕のこの幼稚な考えのせいで、数々の世界的アーティスト、ビートルズもクイーンもオアシスも僕の耳には届いても、どうやらまだ魂には届いていないのだ。お互い悔しいだろう。

クイーンなんて中学の頃までハッチポッチステーションのパロディの方を本家だと思ってたんだぞ。

 

別に洋楽だけじゃなく「雰囲気を楽しむ」っていう行為自体がこちらに委ねられすぎて苦手である。

 

食べ物も素材の「雰囲気」だけを楽しむのが苦手なので焼き鳥は「塩」より「タレ」でわかりやすく味わいたいし、コーヒーも香りとかの雰囲気重視のブラックより、ミルクと砂糖ぶち込んだ雰囲気ぶち壊しの甘いカフェラテばっかり飲む。

アニメもドラマも、本当の善悪はどちらか?なんてそれぞれの正義を問われる雰囲気重視の作品より、善が勝利し悪を倒す勧善懲悪ものばかりハマる。だからアンパンマンも半沢直樹も大好き。

 

要するにこんな考えになってしまったのは僕の脳みそがとにかく「ダサい」からなのだと思う。

ただそんなわかりやすいものだけしか嗜めないことがダサいのはいい加減わかっていて、そんな男になりたくないのも事実。

 

ってことでいい機会だ。ここらで思い切って洋楽の最高峰であるビートルズの名曲「Help!」をちょっと調べてみる。

子どもの頃から、両親がビートルズ好きで車でもよく流れていたので馴染みもあるこの曲がなんたるかをいまさらだが調べてみることにした。

 

Help!でググってwikiに潜る。

 

……。

 

なるほど。どうやらHelp!を書いた当時は人気絶頂期で、急な成功と世界的名声を得た最中で感じたプレッシャーや孤独感を反映した曲らしい。

しかし、この曲はただただ映画のために書いただけで、本人たちもガチで忙しすぎて自分をとんでもなく見失っていたから、その感情や叫びが込められているということはこの曲が世に出た後で気付いたらしい。つまり魂とセンスと時代が意図せず掛け合わさってできた至極の1曲なのである。

 

は!? すさまじいな!?

 

かっこよさ、天才っぷり、驚き、全部含めてもう「すさまじい」よ!

 

あのアップテンポで明るいキャッチーな曲調も、もはやギャップ出て厚みを感じるんだが?

しかもたった2分ちょいに、それが全部詰まってるのがすごい。

 

ちょっと待って。あの超有名な「Let it be」は?

ドラマ性あんまり無さそうなほんわかした「Yellow Submarine」は?

曲ができるまでのバックボーンと曲自体の英訳も合わせて歴史を知りたい!

 

 

と、溢れる好奇心に興奮してて気付いた。

 

 

「ああ。洋楽ってこうやって聴くんだぁ…」



※次回の更新は、7月4日(金)の予定です。