
あなたと私のエレガント人生
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エレガント人生(中込悠・山井祥子)
第12話 だから結婚した(中込悠)
なぁ祥子。まずは本当に素敵で美しい文章をありがとう。
外出中に読んだからなんとか我慢したけど、部屋で一人の時だったら間違いなく「うっ……ぅぐっ……」と涙を垂れ流しながら読んでいたと思う。それくらい心の奥までブッ刺さった。
そして率直に、自分はなんて幸せなのだろうと感じた。だって要するに僕は、つくってもらった美味しそうなご飯に「やったー!」とテンションを上げ、それがとても美味しいから「美味い!」と言っているだけなのだ。そんな小学生さながらの反応で、祥子が結婚の理由に挙げるほどまでに喜んでくれていたなんて、とんだラッキーボーイだと言わざるを得ない。
とにもかくにも、普段あまり胸の内を明かしたがらない祥子が、恥ずかしいながらもストレートに想いを綴ってくれたわけだ。これは僕も、真っ直ぐ正面から『なぜ祥子と結婚したいと思ったか』について書くのが筋というもんじゃないだろうか。いや、書きたい。書かせておくれよ。
まずはやっぱり、これだ。一緒にいてとにかく楽しい。またまた幼子のような意見で申し訳ないのだが、紛れもない事実だから仕方ない。
“楽しい”と一口に言っても様々な種類の楽しさがあると思う。
僕の感じるそれは「ウェェーイ! 最高だぜ祥子ぉぉぉぉ!」といった類のものではない。それよりももっとこう、絶妙な湯加減の温泉に浸かった時のような「あぁ。いいなぁ」がずっと続いている感じ、という表現がしっくりきそうだ。
特に何もなかった日とか、むしろ嫌なことがあった日とか、そういう日でさえとりあえず祥子と一緒にいれば「でも、これはこれでいい日だったなぁ」と思えてしまう。
動画を撮ったり、ライブでネタを披露したり、その他諸々のお仕事の時はもちろん、録画した『ザ・ノンフィクション』を観ながら晩御飯を食べたり、行きつけのカレー屋さん『chamame』でカレーをつまみにお酒を飲んだり、どちらからともなく奇妙なダンスを踊り合ったりする時間が僕は心から楽しくて、そんな祥子との毎日がたまらなく大好きなのだ。
嫌な悪口を言わないところも、居心地がいい。
もちろん僕も祥子も、愚痴を吐くことはある。でも五〜十分くらいお互いにあれこれぼやいたらそれで終いで、気がつくと「自分たちと同じ世代で母親のことをお袋と呼んでいる人なんているのだろうか?」とか「結局ケンタッキーは何ピース食べるのが過不足なく最も満足できるのか?」とかくだらない話をしながらお酒を飲んでいる。これがすごくいい。
出会った頃より二人とも少しずつ大人になって、悪口やゴシップが溢れる飲み会がどんどん苦手になっていった。だからそうなりそうな飲みの場にはあまり顔を出さなくなったけど、図らずもそうなってしまうことはある。そういう時、僕はその場の雰囲気に流されて簡単に悪口を言ってしまわない祥子がとても信頼できる。
これからもお互い適度に愚痴は吐きながら、周りに振り回されずに「日本酒をフルーティーって言い表す時頭に浮かんでいるフルーツって何かなぁ?」みたいな話を延々としていようよ。
他には……と、このまま結婚したい理由をひとつずつ挙げていけば、正直どこまでも書き続けられる気がする。それくらい祥子は魅力が溢れている。とはいえ、さすがに読者のみなさんに“落ち込んでいても安納芋のたい焼きを食べると少し機嫌が良くなるところ”といったニッチで細かい理由をいつまでも聞かせ続けるのは忍びない。
だからせめて、そういう細かいひとつひとつの根源にある、一番大きな結婚したい理由を発表させてもらってもいいだろうか。させてもらいます。
それはもう間違いなく、祥子と“一生一緒にいたい”と思ったから。
何をどれだけ語っても、やっぱりそれに尽きる。
祥子以外にも大好きな友達や芸人の仲間は少なからずいるし、できればみんなといつまでも仲良くできたらうれしい。だけど残念ながら人生は色々あって、あれほど仲が良いと思っていた相手と疎遠になってしまうこともある。むしろそういう関係性を手放す方が楽な瞬間さえある。切ないけど、仕方のないことだ。
でも祥子だけは、どうしたってそういう風には考えられない。うまく説明できないけれどあまりにも特別で、この先祥子と一緒に歩まない人生というのが想像できないのだ。
祥子は「(結婚の)一番の決め手となったのは私の存在を尊んでくれていることだ」と書いていたけど、そんな存在、尊いに決まっているじゃないか。まだ三十六年しか生きていない僕でも、そういう存在に出会うのがどれだけ難しいことかはなんとなくわかる。出会うことができたからには、一生をかけて大切にしたい。多分それが、僕の人生なんだろうなと思っている。
だから祥子。頼むからなるべく健康で長生きしてくれよ。好きなご飯やお菓子をモリモリ食べるのはいいけど、ちゃんと適度な運動もしてください。電車一本遅らせてもいいから、駅までの道は慌てて走らずゆっくり歩いてよ。俺もなるべく健康でいられるように、朝のウォーキング続けてるし、朝一で白湯も飲んでるし。サボってた筋トレも再開するからさ。一緒に長生きして、おじいちゃんおばあちゃんになってもエレガント人生やってようよ。
祥子の面白さとか、エレガント人生の活動についてのあれこれとか、ここから派生して語りたくなることもたくさんあるけれど、今回はあくまで“結婚について”がテーマということなのでこれくらいにしておこう。
そしてみなさん。僕たちの結婚に本当にたくさんお祝いの言葉をいただき、心より感謝申し上げます。エレガント人生がここまで愛されるコンビになっていたんだという事実に胸が熱くなりました。より一層気を引き締めて、とはいえマイペースに活動を続けていくので温かい目で見守っていただけたらうれしいです。
ところで祥子。最近やっと涼しくなってきたね。オシャレが楽しめる季節の到来だけど、この秋は狙っている洋服とかあるの? お気に入りの洋服とか、コーディネートとか何でもいいからさ、次回はファッションの話でも聞かせてよ。
※次回の更新は、11月下旬の予定です。