
あなたと私のエレガント人生
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エレガント人生(中込悠・山井祥子)
第11話 そりゃあ結婚せざるを得ないじゃない(山井祥子)
まず、前回悠ちゃんから投げかけられた質問に答えよう。
——単独ライブの感想は?
東京も大阪も楽しかった!中身のことで言うと『この世に完全な善人も完全な悪人もいない』というのが上手く描けた気がしている!細かいけど「下品なあだ名をつけられるのがイヤだ」と言っている女の子が、他人に対してはちょっとイジワルなあだ名つけているところとか、気に入っているよ!
——ちゃんとウケた?
うん!大阪は打ち上げ花火みたいなウケ方で、東京は満天の星空みたいなウケ方だったよ!
——大阪と東京で違いはあった?
どちらとも“キッズ・ウォー”という単語が伝わってなかったよ!世代だね!!
——打ち上げは楽しかった?
うん!激おもしろマネージャーのエピソードトークを堪能したよ!お客様も含めて関わってくれた全員に感謝しながらポテトフライを頬張ったよ!
悠ちゃん、こんなところでいいだろうか?
本当はもっと色んな感想があるが、今回は他にも語らなければいけないことがあるので、短くまとめさせていただいた。
そう。
我々エレガント人生は、結婚したのだ!!
冗談のようだが大マジである。この件に関して、皆さんも大なり小なり疑問を持っていることだろう。だから今回のエッセイは結婚にまつわる内容にしようと思うのだが、あえて『なぜ悠ちゃんと結婚したいと思ったか』という点に絞って筆を進めたい
公の場で彼への想いを明言したことがないので緊張するが、赤裸々に語ろうと思う。
まず、こんなにも気が合う人間と初めて出会ったからだ。
大好きな友達はたくさんいるが、ここまで一緒にいてラクな人間には未だかつて出会ったことがなかった。価値観がそっくりだったのである。
私がカレーのルーだった場合、福神漬けやラッキョウみたいな友達には出会ったことがあった。しかし悠ちゃんは、ほとんど同じ味のカレールーだったのだ。ライスではなく、ルー。
ルー同士を混ぜても味が変わらなさそうなところが、すごいと思ったのだ。全然違う場所で生まれ育ったのに、本当に不思議だ。
ここまで仲良くなれる人間はきっと生涯現れない。こんな人に出会ってしまったら、そりゃあ一生一緒に居たくなっちゃうじゃない?
あまりスピリチュアル的なものは信じないが、悠ちゃんと一緒にいると、そういうのもあるのかなぁと思う。実際友達になりたての頃、悠ちゃんから「祥子とは前世でも友達だった気がする」と言われたことがあるし。私もそんな気がした。
次に、私がつくった料理に毎回「やったー!」と言ってくれるのがうれしいからだ。
良好な結婚生活を送るためには、いい塩梅で家事分担をする必要があるだろう。だが、正直に言うと、悠ちゃんはあまり家事が得意なタイプではない。大雑把な家事はササっとやってくれるのだが、排水溝のネットを変える事や、コーヒーメーカーをクエン酸で洗う事はあまり思いつかないようだ。でも一度「やってね」というと、きちんとこなしてくれる。
それでも私の家事負担は若干多い気がするが、「やったー」のおかげで全然苦ではない。
悠ちゃんに料理を振る舞うと、いつだって同じテンションで「やったー!ありがとう!!」と言ってもらえる。私は料理が好きなので、しょっちゅう悠ちゃんに食べてもらうのだが、毎回「やったー!ありがとう!!」と叫んでからご飯を食べ始める。本当に毎回。おかずの上に温泉卵や目玉焼きを乗せると「ご馳走だぁ!!」とさえ言う。そして丁寧に洗い物をしてくれる。
これってかなりうれしいことだと思う。いくら好きで料理しているとはいえ、自分の時間を使っているので、ちょっとは感謝してほしい。ちょっとの感謝でも満足なのに、猛烈感謝をされると、こちらも猛烈うれしくなっちゃうのだ。
これが一生続いたらもっとうれしいだろうなぁと思った。「やったー」の声が響く家庭である限り、私はご機嫌でいられるだろう。
あと、私の行動を制限しないというのも大きかった。
悠ちゃんは時折、お母さんみたいなことを言う。私が外で目をこすると「バイキンが入るよ」と言い、バスでスマホをいじると「酔うといけないから今はやめな」と言い、「ごはんの前におやつを食べちゃダメ」なんて何度言われたか分からない。さながら過保護な親のようだ。
その一方で、私がやりたいと言ったことは全く制限しないのである。
究極にマイペースな私は、その時思いついたことをするのが好きだ。1人でふらっと出かけるなんて日常茶飯事である。そんな1人遊びに関しても何も言わないし、いきなり「今日の夜は友達と遊ぶね!」と言ってもニコニコしながら送り出してくれる。
この距離感は相当ありがたい、いくら親友だからって四六時中自分の側にいてほしわけじゃないからだ。
自由に生きて、お互いの時間が重なった時だけ全力で楽しめればいい。
そうしないといつか同化してしまいそうで怖い。どれだけ似た性格であっても、あくまで私と悠ちゃんは別々の人間だ。私の知らない場所に行って、いろんな物事に触れて、今の悠ちゃんができあがった。そして私はそんな悠ちゃんを好きになった。それならば、その自然に出来上がった悠ちゃんでいてほしい。
どうやら悠ちゃんもそう思ってくれているようだ。
でもやはり、一番の決め手となったのは私の存在を尊んでくれていることだ。事あるごとに褒め称え、親愛の情を表現してくれる人間——そんなのめっちゃありがたいに決まってんじゃん!!
しかも悠ちゃんは、エレガント人生を組む前から私をそういう風に扱ってくれていたのだ。今から12年ほど前、初めて話しかけられた際も「祥子がつくるコントが好きだ」というような話をされたし、同期の芸人から「中込が祥子は天才だって言っていたよ。」と聞くこともあった。
芸人じゃない男性とお付き合いをした時に気づいたのだが、私は、私の考えたもので笑ってくれる男性が好きだ。というか、そうじゃないと一緒に居られない。私がつくったものを面白いと思ってくれる人間じゃないと、私という生き物を根っこから理解してもらえない気がしたからだ。
結婚するにあたっての絶対条件と言っていい。
この点において、悠ちゃんほどの適役はいないだろう。
たぶんこの世で1番私の面白さを信じてくれていると思う。ありがとう!ありがとう!!
何者でもなかった時も、私が芸人を辞めそうになった時も、ずっと信じてくれてありがとう!そんな悠ちゃんと一生コントをつくっていきたいよ!!!
悠ちゃんLOVE!どういう種類の愛情かは説明できないけど、たぶん今は全部の愛が混ざっていると思うよ!!
書いている内にこれを悠ちゃんに読まれるのが恥ずかしくなってきてしまったので今回はここらへんで締めさせていただきたい。
次回の悠ちゃんにも、結婚に関して書いてもらおうかな。私ばっかり赤裸々に語るなんてフェアじゃないし。頼むよ!
※次回の更新は、10月下旬の予定です。