あなたと私のエレガント人生

エレガント人生(中込悠・山井祥子)

第9話 単独ライブの話(山井祥子)

悠ちゃんから「今年の単独ライブに向ける想いや情熱」を聞かれたので、今回はそれについて書いてこうと思う。

 

 

単独ライブ、それは芸人が裸になれる場所だ。

"裸"と言っても実際に局部をむき出しにして舞台上を走り回るわけではない。古の地下芸人であればない話ではないが、あくまでもこれは私なりのおしゃれな比喩表現だ。単独ライブではその芸人の本質がむき出しになる、という事を言いたかったのである。

 

実は芸人たちは普段、なんらかの制約に縛られてネタを行っている。TVには放送コードがあるし、寄席(出演者が複数人いるネタライブ)ではネタ時間が決まっている。だから全てを脱ぎ捨てて自由にネタを披露できる場に飢えているのだ。特にコント芸人の場合は、ネタ時間によって話の広がり方が大きく変わるので、単独ライブへの思い入れが強い傾向にある。

 

私たちも例外ではない。

いろんな媒体で語っているのでファンの方は聞き飽きているかもしれないが、エレガント人生が1番大切にしているものこそ、この単独ライブなのである。結成した時まず目標として掲げたものも『毎年単独ライブを開催する事』だった。だが結成当初の我々には単独ライブにおける一番大切な存在である“お客様”がいなかった。

 

自分たちに興味を持って足を運んでくれたお客様の前でなければ、それはただの自己満足に過ぎない。好きなネタをやるだけなら、飼っているポメラニアンに向かってやればいい。

 

だから悠ちゃんが『まずSNSを使って人目に触れること』を考えついた。多くの人の目に止まれば何人かはライブに来てくれるかもしれないと期待したのである。そして我々はその作戦に専念するために、所属していた劇場への出演を辞め、TikTokを始め、YouTubeへ活動の場を広げ、今に至る。

その結果、エレガント人生はいわゆる普通の芸人ではなくなった。

しかし目標であった単独ライブの開催を早い段階で叶える事ができた。

 

今年はいったいどんな風になるのだろう?

 

私たちがつくるものには、私たちの“今”を反映しなくてはならない。なんせ単独ライブは裸になる場所なのだから。めかし込んで普段と違う姿を晒しても、お客様を戸惑わせてしまうだけだ。

正直な話をすると、第1回目の単独ライブの時点では、まだ“普通の芸人”に対する執着が捨てきれずにいたのでエレガント人生の“今”を反映しきれていなかった気がする。その頃はまだ「お笑いには正解があるのではないか」という気がしていたのだ。劇場でどういう芸人がウケていたとか、どういうネタが仕事に繋がるかとか、周りを見渡すと正解っぽいものがゴロゴロあって、そういうものを参考にした方がいいのかなぁなんて思っていた。賞レースで良い結果を出すという目標があるならそれを無視するわけにはいかないだろう。

 

しかし、そういう道を外れた私たちには関係ない話だ。「せっかく戦いの場では不正解とされるお笑いに向き合うチャンスがあるのだから、それを思い切りやろう」と思えたのは1回目の単独を終えた後だった。

 

 

こういう経緯から第2回目、第3回目と回を重ねるごとに、エレガント人生っぽさが濃くなってきている。そして今年は4回目の単独ライブだ。願わくばド濃厚にしたい。

 

 

ここまで読んで、どんなものか気になったという方は是非劇場に来て確かめていただきたい。ありがたい事に毎年チケットが即完売してしまうので発売日をスケジュール帳に書き込んでいただけると幸いだ。

「気にならなくはないけど、­YouTubeにコント載ってるのにわざわざチケット買うのはなー」と思っている方もいるかもしれない。でも、単独ライブのコントは別物だ。かっぱえびせんとオマール海老のビスクくらい違う。なにしろ台本がある。普段つくっている映像コントはアドリブなので構成も言葉選びも荒いが、単独ライブでは何もかも全部こねくりまわしながら完成させているのだ。

 

 

私らの裸、存分に見てよ!!!

 

 

 

悠ちゃん、今回のテーマは難しかったよ。なんせ書きたい事が多くてさぁ。

次回の更新は8月か……となると、けっこう単独の準備進んでいるのかな?

 

未来の悠ちゃん、進捗を教えてください。



※次回の更新は、8月21日(木)の予定です。